東洋経済オンライン記事:7月31日記事より
<今週の日経平均は1万7000円を超えられない・1ドル102円台の円高を変えることが重要だ>(平野 憲一 著:ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト)
固唾を飲んで見守った29日の日銀金融政策決定会合の結果発表は、追加緩和としてETF買い入れ6兆円に増額のみと言う、一見拍子抜けするような内容だった。株式市場もゼロ回答ではないが――と言う感じで、引けではプラスになったが、どちらかと言えば、失望売りに近い反応だった。しかし、意外にこれはストライクではないかと思う。
<なぜ「ストライク」なのか>
日銀は「質」(資産買入れ)、「量」(金融市場調節)、「金利」(マイナス金利導入)で景気を活性化させ、デフレを脱却する成功メカニズムを想定している。
株高はそのメカニズムが成功する途中に発生する現象だ。しかし現状は、供給された資金が、マイナス金利まで導入したにもかかわらず市中に流れず、銀行の段階で止まっている。株高で投資家に直接運用益を入れ、市中へのカネの流れを前から引導(手引き)することは、緩和政策成功の妙手の一つだ。その点から言うと、ETFの買い入れ額を6兆円にして、株価にターゲットを絞った今回の追加政策は、良好なもののように思える。ただし、企業業績が佳境に入り、ドル円レートが重要な時に、これへの配慮のなさといったらゼロ回答に等しかった。アクセルとブレーキを一緒に踏んだ結果になってしまった。そこに、米国GDP成長率の予想外の低調(予想2.6%増の結果は1.2%増)が加わり、一気の円高(102円)となっている。黒田総裁としては、若干運がなかったようだ。
日経平均1万7000円から1万7500円に溜まった7万枚のコールオプションを前にした正念場のせめぎ合いは、売り方有利の体勢で持ち越しとなった。売りの溜まった1万7000円を抜ければ、買い戻しエネルギーは大きく、1万8000円では収まらない可能性もあったが、為替対策ゼロ回答と米国GDPによって102円台になっているドル円環境で、今週1週間で日経平均1万7000円を超えるのは厳しい状態となった。火曜日の政府による景気対策の内容にもよるが、1万7000円以上のコールの売り方は丸儲けになりそうだ。ただ、主力株の反発が厳しくなって逆に、中小型個別株の復活が早まるかも知れないが。年表を見ると、アベノミクスの模範であるレーガノミクスは1981年スタートとなっているが、最初はひどい評価を受けて、レーガノミクスと言う称号も無かった。1981年、82年とダウが下がる過程においては、失策としてひどいバッシングを受けていた。知事で少し成功したと言っても、役者崩れのリーガン(当時の日本語表記はリーガンだった。後にレーガンと訂正)の素人政策は、赤字を増やすだけでアメリカをダメにすると言う、それはそれは酷い評価だった。
<評価が一変したレーガノミクスから学ぶ>
ところが1983年から株が上がり始め、1985年のプラザ合意後の一気のドル安ですべてが変わった。株も景気も更に活況になり、レーガン大統領の政策が国を救ったとの評価に変わった。レーガノミクス初期のひどい評価、そして成功したのはドル安が原因だったこと、その後の「神対応政策」へと評価は変貌。1970年入社で油の乗り切った10年選手であった筆者の目に、その一部始終がはっきりと焼き付いている。とにかく円高ではだめだ。逆プラザ政策を成功させることがアベノミクスを成功させることだ。円売り介入が無理なら、国債を増発して円を貶(おとし)めることだ。
今週は為替次第の展開だ。このところ続いていた堅調なドルは、米国1.2%のGDP成長率で再びドル安になった。週末の米雇用統計でその流れが変わるか。前回、前々回で上下に大きくぶれている雇用者数が今回もぶれるのか、不安と共に注目される。今週の日経平均予想レンジは1万5800円―1万6900円とする。
☆:私心:国の財政政策を行う、日銀は金融関係のベテランが絞りに絞って出した政策が裏目に出て、急激な円高に進んだ。要因の一つは米国のGDPの低成長が大きく影響している。経済は生き物、考えた通りにことが進めば、皆金持ちである。さて、日銀にこの円高を止める手立ては残っているのか、上記の記事のごとく、国債の発行しかないのか?赤字の会社が空手形をきるように思えるのは、私だけ?これ以上国債=国民の借金増やして、将来、返す道筋はあるのか?