東洋経済オンライン記事:9月11日記事より
<安いのに上がらない日本株が水準を変える日・いよいよ10日後に迫った日米金融イベント>
平野 憲一著 :ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト
ジャクソンホールでのイエレンFRB議長の講演内容より、フィッシャー副議長の発言に反応したアメリカ株にあやかったわけでもないだろうが、先週木曜日の中曽宏日銀副総裁の都内で講演内容が話題となった。次回の金融政策決定会合で行う過去3年半の金融緩和策の「総括的な検証」をテーマにした講演だった。中曽副総裁は、マイナス金利付きQQE(量的質的緩和)の効果と影響について「イールドカーブ低下には効果的で、政策ツールとしての有効性が確認できた」と評価した。一方で、「金融機関の収益低下等、経済活動に悪影響を及ぼす可能性には留意が必要」とも語り、だからと言って「マイナス金利の深掘りはできないということはない」。
<ECBは金利を据え置いた>
結局、9月会合での「総括的な検証」では「現在の政策の枠組みの修正」を否定しなかったものの、最後まで明確な答えを出さず、イールドカーブのスティープ化は匂わせたが、市場との対話は不完全に終わった。日米の金融イベントの参考として注目されていた同じく木曜日のECB定例理事会では、金利は据え置かれた。事前予想では、日銀と同じく政策の手詰まり感を指摘されながらも追加緩和を実行するのではないかと言われていたが、不発だった。ドラギ総裁の会見でもサプライズは何もなく、FRBや日銀の動きを推測することは出来なかったが、意外に景気の底固さを感じさせた。
日本株が世界に比べ割安なことはいくつかの現象で証明できる。まず予想PERは日本の14倍台に対して、過去日本よりも割安であったドイツが今や16倍台、米国は20倍台になっている。各国で違う税率や減価償却率の影響を受けるPERでの国際比較は不適当かも知れないが、株価キャッシュフロー倍率で見たらどうか。世界の株価が1株当たりキャッシュフローの何倍まで買われているかを見ると、日本の7倍に対して先進国平均は11倍台だ。1株当たりキャッシュフローとは税引き後利益+減価償却費で、減価償却費を元に戻してしまえば世界で違う償却率の影響を受けにくく国際比較が合理的に可能だ。さらに昨年末から10%前後上がっている米英独株に対して、日本は逆に10%下がっている。
<日銀の追加緩和と米利上げ>
このようなことになっている理由は、2013年には現物先物合計で16兆円買い越した外国人筋が、昨年から10兆円の売り越しに転じていることと、円高の影響で業績の先行き見通しが悪いからだ。ただし、日本の業績は円安になれば良いほうに変わり、業績が良くなれば外国人買いが戻って来る。日銀決定会合追加緩和―FOMC利上げ―円安―外国人買い本格化となれば日本株の水準が変わる。その意味で来週(20〜21日)に開催する日・米金融政策の決定会合は、アメリカ株の趨勢だけでなく、日本株の割安脱却の道が見えるかという点で最も重要な注目イベントだ。先週末9日のダウは394.46ドル安の1万8085.45ドル、ナスダックは133.57ポイント安の5125.91ポイントと久々の大幅安となった。ボストン連銀のローゼングレン総裁が講演で、金融政策を引き締めていくのが適切だと述べたためだ。『FOMCメンバー中ハト派で知られる同総裁の「豹変」に株式市場は大きく反応した。』
また、FRB高官がFOMC前の発言を控えるブラックアウト期間に入る直前の週明け12日に、ブレイナードFRB理事が講演を行うことが突然公表され、前日のECB理事会の追加緩和見送りで景気の底堅さが指摘されていた事もあり、何か事件的変化(9月利上げ確定か)に過剰反応した感じもあるが、日米とも極端に低いボラティリティーが続いていたのは、嵐の前の静けさだったかも知れない。アメリカ株が下げない理由の一番が「それほど上がらない金利」だっただけに、金利急変の雰囲気はアメリカ株のボラティリティーを高めそうだ。日銀ETF買いは、先週末も執行された。9月に入って2回目だが、1回目と同じく733億円の買入れ額だった。
<下値不安なしという過信は禁物>
今週も下がれば買うと思うが、『市場の70%は外国人投資家に支配されている世界でもまれな日本市場』、下値不安なしという過信は禁物だ。日本株の水準を決めるのは外国人であるということは肝に銘じておかなければならない。もちろん下げるリスクだけではなく上げについてもだ。
☆:私心:日本国の株式市場は7割の外国人が支配しているとは、これでは日本市場ではなく、外国の市場と同じではないか?さて、一時は9月利上げ案もでたようだが、据え置きとなり、一安心?今週の為替相場と株式相場のながれはどのようになることやら・・・・。